シェリー「十七才の素顔」 
(作詞・橋本淳 作曲・あかのたちお 編曲・竜崎孝路 1975年)

シェリーは1974年に「甘い経験」(作詞・山上路夫 作編曲・馬飼野康二)でデビューしました。歌手デビュー前はフランス系ハーフの
モデルとして活躍していたとの事。その容貌を活かしてか、日本テレビ系列のドラマ「オズの魔法使い」で主役のドロシーを演じて好
評を博しました。

「十七才の素顔」はそんな彼女の3枚目のシングルです。
「甘い経験」と続く「やさしく奪って」(作詞・山上路夫 作編曲・馬飼野康二)がどちらもフランス系ハーフを意識した軽妙なポップス
調の曲であるのに対し、この曲は哀調を帯びたいかにもこの時代の日本人好みのする曲になっています。私の個人的な好みでは
こういう曲がツボで、ここ数年で一番よく聴いている曲かもしれません。

70年代の歌謡曲を聴いていると「17才」という年齢を特別視していた事が伺えます。代表的な曲だけでも南沙織「17才」、桜田淳子
「十七の夏」、岩崎宏美「センチメンタル」などが挙げられます。「子供と大人の狭間の微妙な年齢」と言うモチーフは当時の歌謡曲聴
衆者の共感を得やすかったのでしょう。先に挙げた曲はいずれも恋の芽生えをモチーフに爽やかさのある心地よい曲となっています。

そんな中、この「十七才の素顔」は趣を異にします。

好きと今は言わないで
逢えば胸が熱くなる
愛の意味も知らないで
すべてをあげたのよ

好きと今は言わないで
悪いことはしないから
涙色した私をみてて


その場の雰囲気に押されたのか、相手が強引だったのかは知らないが、要は「すべてをあげ」てしまった、ある意味恋の帰結から始まっ
ています。「すべてをあげた」あとに「好きと今は言わないで」という気持なんて十七才の人間にどこまで理解できるのか・・・

女の子の心にそっとそっとふれた
あなたの指はそよ風、大切なもの
あなたひとりだけに
つくす愛の季節


なかなか昨今の楽曲では目に触れる事のない表現がサビにきています。「すべてをあげた」のはいい加減な気持ではなく、あくまでも、
大切なあなたのためなんだよ、という点をアピールしています。
しかし、「あなたの指はそよ風」とは、捉えようによってはかなりエロティックな表現な気もしますが・・・
「大切なもの」の後に金属的な高い「ピーン」というシンセサイザー(?)の音が入りますが、この音が何故か妙に艶かしく感じます。

好きと今は言わないで
絹をまとい思い出を
ひとりじめしたいの
好きと今は言わないで
胸に秘めた幸せを
私誰にも話したくない


個人的にこの「絹をまとい」という表現がいまいちピンと来ないというか、どういう意味があるのか判りません。
まあ、歌謡曲の歌詞にそこまで意味を求めない方が良いのかも知れませんが・・・

女の子の心にそっとそっとふれた
あなたの指はそよ風、大切なもの
愛を知りそめたら
私大人びたわ


「愛を知りそめ」ても大人ではなく、あくまで「大人びた」、つまり実際はまだ少女なんだという点を強調しています。
「大人びたわ」の最後の「わ」を異様に引っ張って歌い、そこに哀調を帯びたストリングスを被せて、曲は終了します。
これが「十七才の素顔」とは、なかなか大胆な題名だなあ・・・
曲名はジャケットには「17才の素顔」と書かれていますが、裏面の歌詞カードには「十七才の素顔」と書かれています。とりあえず、
歌詞カードの表記を優先しました。ちなみにジャケット写真の撮影は篠山紀信です。



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