林寛子「危険がいっぱい」
(作詞・片桐和子 作曲・平尾昌晃 編曲・馬飼野俊一 1976年)



林寛子は1959年、東京都出身。
7歳のときから子役としてテレビドラマなどに出演していましたが、1973年にフジテレビのオーディション番組「君こそスターだ!」の
第1回グランドチャンピオンになり、1974年に「ほほえみ」(作詞・千家和也 作曲・鈴木邦彦 編曲・竜崎孝路)で歌手デビューを果
たしました。アイドル歌手としてはかなりの歌唱力の持ち主で、大ヒット曲はないものの、歌謡曲マニアには愛聴者が多い歌手だと
思います。

この「危険がいっぱい」は8枚目のシングルになります。
6枚目の「素敵なラブリーボーイ」(作詞・千家和也 作編曲・穂口雄右)、7枚目の「カモン・ベイビー」(作詞・千家和也 作曲・穂口雄右
編曲・竜崎孝路)が明るい曲調のロック系歌謡曲だった反動なのか、この曲は「歌謡曲」としか表現できないような曲に仕上がってい
ます。

イントロ部分はまず、ドラムでリズムを刻んだ後、ブラスセクションを総動員させて、一気にテンションを高めます。この何かを煽り立てるよ
うなブラスセクションの使い方は編曲者の馬飼野俊一の得意技でもあります。イントロから歌い出しの間のベースラインも格好良いです。

愛の言葉を カードに書いて
バラの花束を 届けに来たのね

危険だけれど 危ないけれど
あなたをこの部屋に 迎えてあげるわ


誕生日だか何だかわかりませんが、彼氏かボーイフレンドが訪ねてきたのでしょうが、「バラの花束を」抱えては時代がかりすぎだろうと
思います。
歌の合間にストリングスの豪快な駆け上がりが入り、曲をどんどん盛り上げていきます。

好きよ 好きよ 好きなの
いつも いつも 逢いたい ああ あなたに
帰らないでいて 遅くてもいいの
このまま いたいの


危険だとは解っていても、女の子だって高まる恋心の前には感情を抑えられないものなのでしょう。
「好きよ 好きよ」のあたりからコーラスも加わり、こうした抑えきれない感情を一層強調して、サビを迎えます。
「ああ あなたに」のバックのストリングスが格好良いです。

誰も来ないわ この部屋には
明りを暗くして 抱いていもいいのよ
何も言葉は いらないけれど
くちづけの後は 優しくしてよね


2番に入ると、急に歌い方に色気が加わります。
「抱いていもいいのよ」と「優しくしてよね」の語尾を粘りこっく引っ張って歌います。17歳にこんな歌唱指導をするとは・・・
まあ、「危険だけれど」とか言いながら、自分から誘いをかけるしたたかさをアピールしているのでしょう。

好きよ 好きよ 好きなの
いつも いつも 逢いたい ああ あなたに
旅にゆきたいわ どこか遠くまで
あなたと ふたりで
秘密に するなら


最後も粘り気のある歌い方でしめ、それにブラスを重ねて曲は終わります。
この時代特有の何かを煽り立てるようなアレンジを楽しめる楽曲だと思います。

ちなみに、この時代のレコードには譜面が記載されている事が多いのですが、こんな艶かしい曲を実際に演奏した人はいるのでしょうか・・・





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